| 11月、12月 合同鑑賞会 |
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11月 ◆(真知子) 火より火を奪ひ烈しく秋刀魚もゆ 莫秋子 この秋刀魚はきっと七輪とか焚き火とかで、焼かれたのだと思う。油がとても 乗っているから、火も激しくなるんだろうなぁ。自分自身を焦がして焼いてい る。。ちょっと悲しさというか怖さも感じます。 ◆(朱実) 庭師来て冬の形をつくりだす 平井照敏 「冬の形」とは松の雪吊りや幹を筵などで巻いたりする冬支度のことでしょう。 雪などめったに積もらない東京でも、大きな日本庭園ではこういう光景が見ら れ、冬の風物詩となっています。庭師のてきぱきとした作業ぶりとその出来上 がりの見事さ。見慣れた庭が一日でがらっと変わった様子が、「冬支度」や「 雪吊」という季語ではなく、「冬の形をつくりだす」に表現されていると思い ます。 作者の平井照敏は、先日亡くなられました。以前人に薦められてこの方が編集 した「現代の俳句」という本を読みました。虚子以来の俳人107人のアンソ ロジーですが、いろいろの人の俳句が一冊で読めるので、とても楽しいですし、 実は毎回の鑑賞句のネタ本としてお世話になっています。何度も読み返すうち に好きな俳人や句が変わってくることもあり、多少の勉強にもなるかなと思っ ています。というわけで訃報は少しショックでした。ご冥福をお祈りします。 12月 ◆(有敏) 西日中電車のどこかつかみをり 石田波郷 季語は西日(夏)夏の一日が終わりまだ日が暮れぬ中、満員電車に乗って帰宅す る人々。一日の疲労が濃く、汗のにおいが満ちた車内。人々がそれぞれ車内の どこかしらつかんで耐えている。なかには無理な体勢でつかんでいる人もいる だろう。西日という季語がどこか寂しさややりきれなさをかもしだしていて情 景が頭に浮かんでくるよい句だと思います。 ◆(朱実) 人間は管(くだ)より成れる日短(ひみじか) 川崎展宏 今年の初めの人間ドックで胃の内視鏡検査を受けた時、この句を思い出しまし た。胃腸などの消化器管のほかにも気管、血管など人間の体は「管」で成り立 っていることを実感しました。そして、一日掛かりで他の検査も終わって、病 院を出た時にはすでに日が落ちてしまっていたその時の情景と、検査の結果に 対する不安、心もとなさが「日短」という季語にぴったりだったのです。この 句は、管から出来ているという点では人間も他の生き物と変わりないと言って いると同時に、しかしその人間は他の生き物を違って考えたり、文字を書いた り、新しいものを作り出すことのできる「管」なのだということも表している ように思います。 ◆(貴幸) 八方の枯れをうかがふ女郎蜘蛛 宮田千鶴子 八方の枯れというあたりが、広く大きく張った蜘蛛の巣を連想させる。冬の寒 いなか、草木が枯れ、あたりが静まり返っている状況で、それをしめしめと思 うかのように、虎視眈々と獲物を狙う様をよくとらえている。OLでいえば、お 局が周囲の女性が徐々に歳をとってきたのを喜ぶ様になんとなく似ている。 |