9月  定例句会
 

◆(朱実)
をりとりてはらりとおもきすゝきかな  蛇笏
この句の中心は「はらりと」という言葉だと思います。手で折れるほど細いす
すきなのに、折り取った時意外に確かな重みを感じたその驚きが「はらりと」
に表されているのです。そしてその確かな重さに生命の重みをも感じていたの
ではないでしょうか。またこの句の特徴として、すべてひらがなで表記されて
いる点があげられます。俳句は読んだ時のリズムが大切ですが、書き表された
文字から受ける印象もまた大きな要素だと思います。漢字の「薄」よりひらが
なの「すすき」の方がやさしいイメージを受けるし、同じ漢字でも「薄」と「
芒」では受け取り方が違います。この句はもちろん意図的に全部ひらがなで書
かれたのですが、繊細なやわらかさがよく出ています。表記の大切さについて
も教えられる句です。

◆(昌子)
赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり  正岡子規

難しい言葉も技巧も使われいいない平易な句です。それなのに情景が
ありありと想像できます。近くの赤とんぼと遠景の筑波の空赤と青い空の対比、
絵画的な美しい句だと思います。

◆(幸江)
蔓踏んで一山の露動きけり   原石鼎

不用意に置いた足元から大きく広がってゆく動き。静寂を破るように草木にと
どまっていた露がこぼれ落ち、それを返す葉音が響く。山全体が動いたかのよ
うに。秋の早朝の山の空気も伝わりくるようで、そんな山路を一人で歩いてみ
たくなるような句である。

◆(真知子)
名月を取ってくれろと泣く子かな  一茶

11日くらいだったかな。十五夜の前でしたが、火星と接近している月を近所
の子が双眼鏡で歓声をあげながら見ていました。本当に貴重な火星の大接近。
子供ならずとも、胸踊る光景でした。このまま、切り取って心に焼き付けたい
と強く思いました。


◆(貴幸)
無月かな匂ひ袋も遺品にて  島ふで女

めずらしく無月を季語している句。無月の会の「無月」は確かイントネーショ
ンと1年中俳句を詠みます、というような意味があったと思う。この句の無月
は、もちろんそのままの「月」。中秋の名月なのだろう。生憎今宵は曇りで月
が見えない。だがそれも母か、誰かの遺品を前にして作者は粋に感じている。
無月の闇の中にかすかに残る母の匂い。そんな秋の夜があってもよい。



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