6月  鑑賞会
 

(5月追加鑑賞句)
◆(裕子)
葉桜やなにも気負ひのなき日々に 田中律子

若い頃には将来に夢もあったが、中年期を過ぎ今は、平凡な人生
を淡々と送っている。現在の自分を否定するのではなく、これは
これで悪くないと現状を静かに肯定しているのである。


(6月鑑賞句)
◆(朱実)
一行を書きそれを消し梅雨長し  高野素十

梅雨の句はどうしても暗くうっとうしい感じになってしまいがち
です。自分の内面を探るような突き詰めた句が多いように思いま
す。この句は雨のために閉じ籠もって一日中何か書いてはみるも
ののなんとなくまとまらない様子を詠んでいますが、「梅雨長し
」とはっきり心境を出したために鬱屈した感じにはなっていませ
ん。まるで子供がお絵かきに飽きて「早く雨がやんで外で遊べる
ようにならないかなあ」と言っているかのようで、素直に共感で
きるのです。


◆(幸江)
愛さるる身は夏雲もまぶしまず 岡本 眸

雲が湧き立つ夏空をまぶしく感じないほどの内面の充足感がいき
いきと表現されている。私自身の傾向として心情が強く出ている
句は好まないようなのだが、この句が受け入れられるのは夏雲と
いう強い語感の季語が働いているからではないかと思う。
また、単に夏空とせずに雲に視点を置いたことで景に広がりがで
ている。


◆(広美)
物をくふ間もさせる日傘(ひからかさ)  花井鷹士

この句はどうみても女のしたたかさや「女忘れてるぞおいおい!
」と警告をうけているのだけれど、男性の目から見た日傘の色っ
ぽさの幻想がうかがい知れます。女は肌を焼くのが辛いから(色
白を望むから)なんてさしている人も多いのですが、実際は後日
残るシミやチョッとでも涼みたい欲望の塊が、傘を差させるので
す。まあそういう人だけでもないけれど。作者はよくそれれを見
抜いている。バックとは違うけど何でも入れちゃえば隠せる武器!
の一つに見ているのではないかと思った。ビンゴ!女は男性が見
ているイメージを壊さない程度に弱くもありド強くもあるのです。


◆(真知子)
労後のビール白泡を捧げ飲む 榎本冬一郎

この気持ち、本当によくわかります。満足に仕事が終わった後は、
おいしいビールになりますよね。そんな、ビールを飲めるように
仕事をしたいものです。最近ちょっと落ち込み気味なので、ビー
ルがまずいかな。。


◆(昌子)
念力のゆるめば死ぬる大暑かな 村上鬼城
                  「定本鬼城句集」より

私は、夏の圧倒的な暑さが苦手で、毎年ぐったりしてしまいます。
今は冷房が有っても、夜の寝苦しさはつらいものです。
健康でもつらいので、年よりや病気の人が夏が終わると火が消え
るようにパタパタなくなっていくのはわかるよう気がします。
だから、この句の夏に負けないぞうという意気込みにとっても共
感できました。ちょっと大げさな言いまわしがある意味ユ−モラス
な感じがします


◆(貴幸)
少年に蝉の森かぎりなくあをし 木下夕爾

詠み手は1914-1965年に広島で活動を行っていた人。五七五調では
ないが、少年と蝉の取り合わせを「かぎりなくあをし」がうまく幻
想的世界へ誘ってくれている。五七五調でも詠えなくはないが、や
はり詠み手独特の味わいを持っているように思う。



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