5月  鑑賞会
 
◆(朱実)
巻き舌のつひ出て青し蓬餅  桂郎

この句の中心になっているのは「青」です。青は蓬餅の色ですが、
「青春」に代表されるように「若さ」「未熟さ」を表す色でもあり
ます。
若い頃は短気でけんか早かったが、今はすっかり落ち着いて普段は
声を荒らげることもなくなったのに、口論となりつい昔のべらんめ
え調が出てしまった。「そんなにむきになることでもなかったのに
自分もまだまだだなぁ」という自嘲の句ですが、それを楽しんでい
るようにも感じられます。「青し」とあっさり言い切っている所に
も作者らしさが出ていると思います。


◆(幸江)
壺にして深山の朴の花ひらく   水原秋櫻子

大ぶりのどっしりとした壺に、労して庭から切り出し
たのか朴の花が生けられている。そしてそれが大きく
開き、辺りに香りが満ちている。
その空間に深山を感じ、深山路へ思いを寄せている
作者の心情が感じとれる。
私はとても好きな句なのだが、作者が自選句集に
収めていないのが興味深い。


◆(朝也)
山門を出れば日本ぞ茶摘唄  菊舎

山門を境界として、そこを通過した時の変化の実感は理解できるが、
なぜ日本なのか?実はこの句の舞台とされる京都府宇治市万福寺は
中国・明の隠元禅師によって創建された、中国さながらの風情色濃
い寺。したがって、山門を境界とした内と外は、さながら中国と日
本であり、茶摘唄は日本であるという実感を導くスイッチの役割を
果たしている。これまでのことを十分に伝えることができるのかと
いう難点はあるにしても、山門を境とした内外の変化のダイナミズ
ムを1句に収めたことには感心させられる。


◆(昌義)
たんぽぽたんぽぽ砂浜に春が目を開く  荻原井泉水

形式にとらわれず思いを自由に表現した‘自由律俳句‘の代表作。
尾崎放哉、種田山頭火等がこの自由律俳句の先駆者。瞬間の印象を
生かし話し言葉で表現した俳句。砂浜一面に咲きそろったたんぽぽ
の花を目前にうれしさをダイレクトに表現した景色を詠んだ句。先
日草加で発見したカントウタンポポの群生にこの句を思い出しまし
た。


◆(真知子)
紫陽花の花に日を経る湯治かな    虚子

湯治で泊まっている間に、紫陽花の色がだんだん変わっていくので、
日が経ったことを感じるなぁ、という句です。
花の色の移り変わりで日を数えるような湯治をしてみたいです。
優雅な句ですよね。



◆(昌子)
青梅に眉あつめたる美人かな  蕪村

この季節、梅の小さい実がなってきます。青梅というと実の
すっぱさと併せて、春から夏への新鮮な季節感が良く出ていると
思います。
蕪村の句は絵画的だと言われますが、この句も情景が目に浮かぶよ
うです。
美人もだいなしという意味にとる説明もありますが、私は、逆に美
しい人が眉をひそめる、その不調和さにかえって美しさを感じます


◆(貴幸)
朝市やまづ青梅のありどころ  日美清史

朝市というにぎやかさの中、作者も他のお客とともに商品を見ている。
ふとたちよったところでは、商品もさることながら店のおばあちゃん
に目がいった。さてさてどんなものをうっているのか。
 朝市という場での一瞬を見事にとらえている。


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