12月  鑑賞会
 

◆(朱実)
海に出て木枯帰るところなし  山口誓子

とても淋しい句です。木枯らしが吹く断崖に波が逆巻く
冬の海という厳しい情景がよく描かれていて、なおかつ
地上を我が物顔で吹きまくる木枯らしでさえ「帰るとこ
ろなし」と言い切るところに、作者自身のどうしようも
ない孤独感が表現されていると思います。
俳句を作り始めてまもなくに知った句なのですが、17文
字で情景と心情の両方を伝えられるなんて俳句ってすご
いなぁと思わされた句です。

◆(昌子)
今、小林一茶の゛生き物句帳゛を読んでいるので、中か
ら一句。

山盛の花の吹雪や犬の椀

普通の家庭でもよくある風景です。そのなかに、桜の花
の美しさ、犬への愛情・共感を感じます

◆(幸江)
冬菊のまとふはおのがひかりのみ   秋櫻子

木々の葉が落ち、花も散ってしまった寂しい冬の庭に
ひっそりと咲く菊の佇まいが見える。秋の明るい
色合いではなく、薄い色であろう。おのがひかりのみ
まとっているとの表現により、寒さに耐えて咲く菊に
どことなく気高さを感じる。他の冬の花ではどうで
あろうか。やはり冬菊が動かぬと思える。自解では
触れられていないが、花の姿に自身を重ねていると
思う。


◆(研二)
冬蝶のいのちふたたびみたび舞ふ    藤田湘子

 この句は「冬蝶のいのち」で一度、切れている。それに
もかかわらず一つながりのような凝縮を感じる。それは
「いのち」という語の音が次の「ふたたびみたび」に流
れるようにつながっているからである。
句の意味は明瞭。ひらひらと舞った冬の蝶が、それで命
尽きるかと思うと、二度、三度と舞うのを見て、作者は
命というものに心を動かされている。
「舞ふ」の語が能を連想させ、句の格調を高めている。
冬の蝶というはかないものとその命の強靱さと。

◆(真知子)
ねこに来る賀状や猫のくすしより   より江

かわいい俳句だなと思いました。うちも、犬と猫がいる
のでこういう状況がこれから起こるかもしれません。
「佐々木ヴェルディ様」なんて、猫宛てに来たらかわい
いですよね。

◆(貴幸)
病棟の風呂沸いてゐる年の暮   米山 直昭

年の暮れ、日頃の疲れもそうだが、殊に12月は1年分
の疲れや垢を落とそうと風呂に入る。作者は病棟にいる
患者であり、いつも見慣れているはずの風呂に「年の暮」
を感じた。なぜか。
死を真っ向から向かい合わざるをえない作者が、今年も
なんとか1年を無事に過ごすことができたことが1つ。
1年で一番慌しい時期に、いつもどおりの風呂に水が張
ってある状態に感謝していることが1つ。「年の暮」と
いう1年の終りを自分の人生になぞらえ、他人のお世話
がなければ自分は生きていけないのだとも感じているのでは
ないだろうか。「死」を目前にして研ぎ澄まされた感性
だと感じる。






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